Archive for the 'Advanced Japanese' Category
October 8, 2009
Advanced Japanese: 神無月(Kannazuki)
昔、日本で使っていた暦の十月は「神無月」と呼ばれますが、読めますか?
初めは漢字の通り「かみなづき」と読んでいましたが、そのうち発音しやすいように「かんなづき」と読み方が変化しました。
日本には八百万(やおよろづ…「づ」は昔の表記で、読み方は「ず」で良い)もの多くの神々が存在する、と信じられていました。その神様が十月になると一斉に出雲大社(「いづ(ず)もたいしゃ」と読む。現在の島根県にある大きな神社)に集まるのだそうです。すると、出雲以外の全国津々浦々には神様がいなくなってしまうため、「神様が無くなる月」と表わしたのですね。これ以外にも、雷の音がしなくなるので「雷無(かみなし)月」と呼ばれ始めたのだ、という説もあります。
あるいは、秋に新しくとれた米や穀物で酒を醸造する月というので「醸成(かみなし)月」(「醸」の漢字は「かもす」と読み、「酒や醤油などを作る」意味。「成」は「なる」と読み、「~を作る、~にする」意味)という説もあります。
さらに、この季節にはしばしば、降ったりやんだりするにわか雨に見舞われるため、その雨の名称を用いて「時雨(しぐれ)月」という別の呼び方もあります。
ちなみに、現在のカレンダーで十月は秋ですが、当時は冬にあたりました。
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Old Japanese calenders that were used in the past referred to October as「神無月」- can you read this word?
At first, it was read according to the readings of the kanji: Kaminazuki, but before... Show more
October 1, 2009
Advanced Japanese Lesson: 読点(touten), Commas
彼は走って逃げる彼女を追いかけた。
この文章を読んで、あなたならどんな場面を想像しますか? つまり、「走っている」のは誰でしょう?
もし、「彼は、走って逃げる彼女を追いかけた。」であれば走っているのは「彼女」になります。「彼」は歩いて追いかけたのかもしれないし、自転車で追いかけたのかもしれません。
では、「彼は走って、逃げる彼女を追いかけた。」と書いてあるとき、走っているのは誰ですか? そう、「彼」ですね。「彼女」は自動車に乗って逃げていった、などという想像も成り立ちます。
日本語においては、このように「、」がある位置によって、その文章の意味が大きく変わってしまうことがあります。「、」は読点(とうてん)と呼び、文章を読み上げるときにどこで息継ぎをするか、言い換えれば、文章の小さな句切れ目を表わします。
日本語で文章を書くとき、この読点がないとどこで区切れるのか分からず、結局、文章全体の意味が不明瞭になることがあります。この例文のように、走っているのは誰なのか分からなくなってしまうのですね。反対に、読点を打ちすぎると単語と単語がばらばらに区切られてしまい、これも読みづらい文になってしまいます。「彼は、走って、逃げる、彼女を、追いかけた。」…結局、走っているのが誰か分かりません。
小さい「、」にも、実は大きな力があるのです。
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彼は走って逃げる彼女を追いかけた。
(He runs after the fleeing woman.)
When you read this sentence what kind of scene do you imagine? In other words, who is it... Show more
September 17, 2009
Advanced Japanese Lesson:秋の到来(aki no tourai),The Coming of Autumn
日本では「食欲の秋」と言われ、一年のうちで秋は最も食べ物をおいしく感じる季節です。秋の食べ物といえば、松茸や栗、梨、柿、秋刀魚などが思い浮かびます。季節を味覚で感じるのですね。
また、イチョウやモミジ、カエデなどの木々は赤や黄色など鮮やかに紅葉します。このように、視覚でも秋を感じることができます。
さて、今から約1000年前に聴覚で秋の到来を感じた人がいます。
秋きぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる
これは『古今和歌集』という昔の短歌を集めた本に載っている、藤原敏行という人が詠んだ和歌です。
「秋きぬと」の「きぬ」は「来た」という意味。「さやかに」とは「はっきりと」という意味です。「見えねども」とは「見えないけれど」。「おどろかれぬる」とは、「はっと気づかされた」という意味。
つまり、「暑い日が続いているので、まだ夏だと思っていた。しかし、違った。秋が来たと目ではっきりと見えないけれど、風の音を聞いていると秋の訪れにはっと気づかされた。目に見える風景は昨日と同じ、夏の景色だが、風の音は明らかに秋の到来を告げているのだ」と彼は詠んだのです。これが聴覚でも秋が感じられる例です。
季節は徐々に移り変わるもので、「今日から秋!」と明確に認識することはできませんが、五感を存分に働かせてささやかな変化を感じ取るのも面白いものです。
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In Japan, there is a saying "appetites of autumn." Autumn is the time of year when food simply tastes better than during any other... Show more
September 3, 2009
Advanced Japanese Lesson: ○○焼き;– Yaki
たこ焼き、たい焼き、お好み焼き。あなたは食べたことがありますか? 文字だけ並べるとよく似ていますが、実は全く違う食べ物です。
まず、たこ焼き。材料は、小麦粉、卵、ネギ、紅しょうがなどで、ボール状に焼くのですが、真ん中に小さく切ったタコが入っています。タコが入っているので「たこ焼き」。分かりやすい名前ですね。
では、たい焼きは? タイは結婚式などのお祝い事に食べられるめでたい魚で、高価であるため、めったに食卓に上ることはありません。たこ焼きにはタコが入っているので、たい焼きにもタイが入っているのだろう…いいえ、残念ながらタイは入っていません。たい焼きには餡子が入っています。ならば「餡子焼き」と呼ぶのが正確なのでしょうけれど、秘密は形にあります。たい焼きは、タイの形をしているのです。ちゃんと胸びれやしっぽまで再現されています。
では、お好み焼きは? 「お好み」という名の何かが入っている、あるいは、食べる人が好む形をしている…? お好み焼きの「お好み」とは、食べる人が好む食材が入っている、という意味です。形は丸く平たいのですが、キャベツ、卵、豚肉、エビ、イカなどがオーソドックスな具材で、たくわんや餅、こんにゃくなど変わったものを入れて焼いてある場合もあります。
「○○焼き」という名前でも、こんなに材料や形が異なるものなんですね。
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"Tako yaki," "Tai yaki," "Okonomi yaki": have you ever eaten any of these things? Just looking at the words themselves, you might think that these are... Show more
August 27, 2009
Advanced Japanese Lesson: 早起きは三文の徳;The Early-Bird gets the Mon
「早起きは三文の徳」ということわざを知っていますか? 辞書には「早起きをすると、何かしら得になる」と書かれていますが、具体的にいくらの得になるか気になりますよね。
「文」というお金の単位は、江戸時代に使われていて、蕎麦につゆを掛けただけの「かけそば」が「十六文」であったという記録が残っています。現在、かけそばは500~700円くらいですので、「一文」は31~44円くらいになると計算できます。もっとも、江戸時代の貨幣価値は変動していたので「一文」が現在のいくらに相当するか諸説ありますが、早起きをすると100円前後の得になる、というわけですね。
ちなみに、「徳」と「得」は同じ「とく」と読みますが、文字自体の意味は少し異なります。「徳」は「経験によって身につけた、優れた気質」を表わし、「道徳(社会の秩序を成り立たせるために個人が守るべき規範)」の「徳」の字です。一方、「得」は「もうけ、利益」のことです。
しかし、「徳」と「得」は同じ意味に用いられることもあり、「徳用」ということばがそれを示しています。あなたが日本のお店で、「徳用品」と書かれた品物を見つけたら、それは通常の量に比べてたくさん入っているので「割安で得だ」ということを意味しています。
さて、「文」という通貨単位はなくなりましたが「一文無し」とか「びた一文、貸さない(「びた」とは価値のないお金の意味)」などとことばの中には今も残っています。
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Do you know the Japanese proverb 'Hayaoki wa sanmonn no toku' (早起きは三文の徳) (Like the English proverb "The early bird... Show more
August 20, 2009
Advanced Japanese Lesson: 忍ぶれど (Waka poem);Though I would hide it…
最初の自己紹介の中で、私は、幼い頃から日本文学や日本語が大好きだったというお話をしましたが、今日は、私が日本文学に興味を抱くきっかけとなった和歌を紹介しましょう。
忍ぶれど 色に出(い)でにけり わが恋は 物や思ふ(う)と 人の問ふ(う)まで
これは今から約1200年前、平安時代に活躍した貴族、平兼盛(たいらのかねもり)が作った和歌です。「和歌」とは「短歌」の古い時代のもので、日本語で発音すると「五・七・五・七・七」という三十一音で表現される短い詩のことです。この和歌はとても有名で、『百人一首』にも採り上げられています。
「誰にも分からないように…と心に秘めていたのに、私の恋心はとうとう表情や言動に現れてしまった。『何か悩みでもあるんじゃないの?』と周囲の人が尋ねるほどに」という意味です。
好きな人を見かけたり噂を聞いたりするだけでドキドキして、また、自分以外の人と親しげにしている様子を見かけて胸が痛くなって…恋を知ると様々なことを考えて思い悩み、まるで「新しい自分」になってしまうようですね。このように、時代や文化、習慣などが違っても、人間が抱く感情は変わりません。文学やことばの奥には、必ず人間がいて、人の気持ちが根源になっています。難しく考えず、人間同士、気持ちを重ね合うことができたら嬉しいと思いませんか。
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In my self-introduction I spoke about my love of Japanese language and literature from a very young age, but today I would like to introduce a particular Waka poem... Show more
August 13, 2009
Advanced Japanese Lesson – 浴衣(ゆかた;Japanese Summer Cotton Kimono)
八月、日本各地では花火大会が行なわれます。やはり花火は浴衣(ゆかた)を着て見たいもの。あなたは「浴衣」を見たり着たりしたことがありますか?
浴衣の歴史は古く、今から1000年以上前の平安時代発祥だそうです。この頃の入浴は一人でするだけでなく、複数の人と共に湯を浴びることもあったため、薄い着物を着るようになったとのこと。
裏地のついていない着物は「単(ひとえ)」。
昔の人は、この単を下着として着用していました。この下着の名前が「帷子(かたびら)」。「浴衣」は、湯を浴びるときに着る下着=帷子なので「ゆかたびら」、これが次第に「浴衣」と呼ばれるようになったのです。「浴衣」の「衣」は「着物」という意味ですね。
現代では、花火大会だけでなく、夏祭りや縁日、盆踊りなどで着られます。吸水性や肌触りの良い木綿で作られているので、蒸し暑い日本の夏にはぴったり。
ただし、着るときは胸の前の布地の重ね方に注意が必要です。相手から見て左側を上に出して着るのは「左前」と言って、死者の装束と同じ、大変縁起の悪いものになってしまうからです。
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In the month of August, fireworks displays are held all over Japan. And of course the proper attire for any good fireworks display is a 'yukata' (浴衣). Have you ever seen or worn a yukata?
The history of the yukata is quite long - dating back more than 1000... Show more
August 6, 2009
Advanced Japanese Lesson – 向日葵(ひまわり;Sunflower)
夏を代表する花、「向日葵」。この漢字が読めますか? ヒントは、太陽のような黄色の花ですよ。
そう、「ひまわり」です。
漢字の意味を一文字ずつ説明しましょう。「向」は「向く」、つまり「ある方向を見る」という意味です。「日」は言うまでもなく「太陽」ですね。「葵」は「アオイ」という花の種類を表わしていますが、ひまわりは植物学的にはキク科の花です。
ひまわりの特性として、花が常に太陽の方を向いていることが挙げられます。観察していると、朝のうちは東にある太陽に向かって咲いているひまわりは、お昼頃に頭上に移動した太陽を追いかけるように南を向き、午後には西に傾く太陽と同じように花を西側に傾けるのです。漢字は、このひまわりの動きに着目して用いられているのですね。
「向日葵は 金の油を 身にあびて ゆらりと高し 日のちひ(い)ささよ」という短歌は前田夕暮(まえだゆうぐれ)という人の作品ですが、見事な黄色の花はまるで金色の油を浴びているようです。また、高さが約2メートルにもなるため、見上げていると太陽が小さく見えるほどの迫力です。
ちなみに向日葵の花言葉は「熱愛」「光輝」「あなただけを見つめている」。鮮やかな花にふさわしい情熱的なことばが当てられています。
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"向日葵" This is the kanji for a well known summer flower, but can you read it?
One hint is that this flower is yellow and it looks like the sun. That's right! This is the kanji compound for... Show more
July 30, 2009
Advanced Japanese Lesson – Haiku: 日焼け顔(Tanned visages)
「日焼け顔 見合ひ(い)てうまし 氷水」 水原秋桜子
「(ひやけがお、みあいてうまし こおりみず)」 (みずはらしゅうおうし)
高温多湿の日本では、七月から九月くらいまで蒸し暑い日々が続き、太陽もギラギラと照りつけます。そんな夏にひとときの涼しさを届けてくれるのが「かき氷」。氷を細かく砕いたものに、イチゴやレモンの味のシロップをかけて食べます。また、甘い小豆や白玉団子を乗せたり、抹茶の粉をかけたりといろいろなトッピングでも楽しめます。アイスクリームよりさっぱりとした食感で、日本の夏の風物詩です。
この俳句に登場しているのは、真っ黒に日焼けした友だち同士でしょうか。向かい合ってかき氷を食べています。「氷水」というのは、かき氷のことですね。
「ずいぶん日に焼けたな。どこかへ行ってきたのかい?」
「うん、海に。君も真っ黒じゃないか」
「あぁ。僕は川へ泳ぎに行ってきたんだよ」などと、
お互いの顔を見合わせながらおいしくかき氷を食べている様子を表現しています。
「うまし」というのは「うまい」「おいしい」という意味。
暑さが厳しい季節ですが、暑いからこその楽しみもあります。その一つがかき氷。ただし、おいしいからといって急いで食べたり、たくさん食べたりすると、キーンと頭が痛くなってしまいますけどね。
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Tanned visages facing each other, delicious shaved ice
By Shuoushi Mizuhara
In Japan, the sun beats down hard during the humid days of summer from about July to... Show more
July 16, 2009
Advance Japanese Lesson – Haiku:万緑の中や (Everywhere is green)
見渡す限りの緑、緑、緑。夏は木々の緑がいっそう濃くなり、たくましさを感じます。そんな風景にふさわしい俳句を紹介しましょう。
万緑(ばんりょく)の中や吾子(あこ)の歯生え初(そ)むる 中村草田男(くさたお)
「万緑」とはちょうど今の季節、草木が一斉に緑に茂っている状態を表わしています。「吾子」の「吾」とは「自分」という意味。ですから、「吾子」とは「私の子ども」を指しています。
その子どもの歯が生えてきたのですね。「初(そ)むる」の「初」は、「初めて~する」という意味です。お正月に習字で新年の決意を書くことを「書き初(ぞ)め」と言いますが、同じ用法です。さらに、「歯が初めて生えた」のですから、私の子どもは赤ちゃんであることが分かります。
さぁ、想像してみてください。
一面の緑の中、この俳句の主人公は我が子をあやしていたのでしょう。赤ちゃんのピンク色の口の中に、白く可愛らしい歯を見つけるのです。生命力あふれる季節の中で、我が子も伸びやかに成長していることを知ったときの喜び。
親が子どもに注ぐ愛情は、いつの時代も変わらないものですね。あなたに初めて歯が生えたとき、あなたのご両親にもこのように嬉しい気持ちがこみ上げてきたことでしょう。
ちなみにこれは1939年、今から70年も昔の俳句です。
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All around you a sea of green, green, green. In summer the trees take on a deeper shade of green and seem more vibrant than before. I'd like to introduce to you a haiku that... Show more