Archive for the 'Advanced Japanese' Category
January 7, 2010
Advanced Japanese Lesson:賀正(gashō)
皆さん、明けましておめでとうございます。
これは、新年の一般的な挨拶です。そして、日本では新年のお祝いを葉書きに記して送り合います。これを「年賀状」と呼ぶことは、皆さん、ご存知ですね。
さて、今日はこの年賀状に書かれる決まり文句を紹介しましょう。
冒頭の「明けましておめでとうございます」は最もよく使われる文章です。この他にも「賀正」や「謹賀新年」ということばもしばしば年賀状に書かれます。この二語に共通している漢字は「賀」。この文字を分解すると、上には「加」が下には「貝」が見つかります。
「加」はさらに分解すると「力+口」ですね。これは「口に手を添えて勢いをつける」という状態を記号化した文字です。ここから、「上に何かを乗せる」という意味に変化しました。下に見られる「貝」ですが、これは古代、美しい貝がらを拾ってきては装飾や賞品、貨幣の代わりに使っていたことを表わしています。
これらの意味を組み合わせて、「賀」という文字には「贈り物をうず高く積み上げる」という意味が生まれました。さらに、「物を贈ってお祝いすること」という意味に発展したのです。
「賀正」の「正」は「正月」を意味するため、「正月をお祝いします」という意味。
「謹賀新年」は「失礼のないよう丁寧に新年のお祝いを申し上げます」という意味になります。
「年賀状」にも「賀」が含まれていますね。「新しい年をお祝いする書面」という意味です。
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Everyone, Happy New Year!
This is the standard New Year greeting in Japan. We also send and receive postcards... Show more
January 4, 2010
Advanced Japanese Lesson:柊(Hiiragi)
「木」に「冬」を組み合わせた漢字を知っていますか?
「柊(ひいらぎ)」です。この漢字は日本で作られた文字で、昔の暦の初冬にあたる10月頃に白い花を咲かせることから「木+冬」の組み合わせとなりました。
柊はトゲのある葉が特徴的なモクセイ科の常緑低木で、本州から四国、九州に及ぶ比較的温暖な山地に自生する植物です。クリスマスリースに用いられることで有名な柊ですが、これは厳密に区分すると日本の柊とは異なるそうです。しかし、トゲトゲした緑色の葉は同じ種類の植物に見えますね。
この尖った葉に触ると指が痛むことから、「ひいらぎ」という名前がついたとのこと。「疼らく(ひいらく=ひりひり痛む)」という古代の動詞が語源だという説があります。
また、日本では節分の日に鰯の頭を柊に刺して戸口に立てて置く風習があります。これは、柊の鋭いトゲと鰯の生臭さを嫌って、鬼が退散するという言い伝えに則っているのです。
ちなみに、「木」に「春」を組み合わせると「椿」。これは「つばき」と読みます。
さらに「木」の右側に「夏」を書くと「榎」。こちらは「えのき」と読みます。
では、「木」と「秋」の組み合わせでは? 「楸」(ひさぎ)ですが、常用漢字ではないため、初めて見た人がほとんどでしょう。
今回は春夏秋冬の四つの季節を右側に記す漢字を紹介しました。
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Do you know the kanji that combines the characters for "tree" (木)and "winter" (冬)?
It's 柊(ひいらぎ), meaning "holly olive". This kanji was created in... Show more
December 24, 2009
Advanced Japanese Lesson: 大掃除(Ōsōji)
十二月の末、日本では一年の汚れをきれいにするために「大掃除」を行ないます。この「掃除」という単語に着目してみましょう。
「掃除」の「掃」には「はく」という訓読みがあり、漢字の左側(てへん)は、「手」を表わしています。一方、右側の「帚」は「持ち手のついたほうき」を記号化したもの。そして、「除」の訓読みは「のぞく」。つまり、手でほうきを使ってゴミを取り除くのが「掃除」であるというわけです。
では、「てへん」を「女」に変えると? 「婦」という漢字になります。これは「婦人」(女性)や「夫婦」(夫と妻)等の熟語を構成し、「ほうきを持って掃除をする女性」を意味しています。
さらに「帰」という漢字にも右側に「帚」が書かれます。「家に帰る」などと使う「帰」という漢字は、一見すると「ほうき」とは何の関係もなさそうなのに、なぜ「帚」を右側に書くのでしょうか。昔、「帰」という漢字は「歸」という難しい文字を使っていました。それが簡略化されて現在は「帰」の形しか使っていません。「女性が結婚して、ほうきを持ち家事をするのは、古来からの役割分担に落ち着いた姿である」ということから、「帰」の文字は「元の所へ戻ってくる」という意味を表わすようになったのです。現在では、ほうきを持って掃除をするのに性別は問われませんが、漢字の中には「ほうきを持って掃除をするのは女性の仕事」という考え方や風習が残っているのですね。
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At the end of December in Japan, we do 'spring cleaning' in order to clear up the dirt of the past year. Let's focus on the word 掃除... Show more
December 17, 2009
Advanced Japanese Lesson: 回文 (kaibun)
「トマト」と「新聞紙」の共通点は何でしょう。
それは、左から発音しても右から発音しても、同じ読み方になるという点です。声に出して読んでみましょう。「とまと」「しんぶんし」。
このように、横書きの場合、左から読んでも右から読んでも、また縦書きの場合は、上から読んでも下から読んでも同じ読み方になることばや文章のことを「回文(かいぶん)」と言います。ただし、日本語として意味のある単語や文章であることが条件です。ことば遊びの一種ですね。英語では「Palindrome」といいます。今回はいろいろな回文を紹介しましょう。
・竹やぶ焼けた(たけやぶやけた)
・ダンスが済んだ(だんすがすんだ)
・私、負けましたわ(わたしまけましたわ)
まだまだたくさんあります。
さて、室町時代(今から約670年前)から、年明けに見る初夢を縁起の良い夢にするための方法として、次のような「おまじない」がありました。それは、七福神の乗った宝船の絵に
「長き夜の 遠の 眠りの 皆 目覚め 波乗り船の 音の 良きかな」
(ながきよの とをの ねぶりの みな めざめ なみのりぶねの おとの よきかな)
【長い夜、深い眠りからみんな目覚めてしまうほど、七福神の乗った宝船は良い音を立てて漕ぎ進んでいく、という意味】」
という和歌を書いた紙を枕の下に入れて眠る、というものです。実は、これも回文です。
こんなに長い文章を考えつくなんて「ことばの達人」ですね。
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What does tomato "tomato" and shinbunshi "newspaper" have in common?
Both of these... Show more
November 26, 2009
Advanced Japanese Lesson: ぺこぺこ(pekopeko)
「もう、ぺこぺこだよー」
この台詞は、ある特定の状況を示しているのですが、どんな場面か分かりますか?
「ぺこぺこ」ということばは「擬態語」と呼ばれ、物の様子を表わします。さてこの場合は、空腹であることを示しています。お腹が空いているため普段よりお腹がへこみ、その様子を「ぺこぺこ」と表現するのですね。「ぺこ」は必ず二回繰り返して用いられ、一回だけ「もう、ぺこだよー」とは言いません。
では、次の文章はどんな様子を表わしていると思いますか?
「あいつはぺこぺこしている」
これは盛んに頭を下げて、お辞儀をしている様子を示しています。さらに、礼を繰り返す仕草から、相手の顔色をうかがってその人に気に入られようとこびへつらう様子を表現するときにも使われるようになりました。直立しているときよりも、頭を下げた方が地面からの高さが低くなり、へこんだ状態になります。また、こちらも「ぺこ」単独ではなく、「ぺこぺこ」と繰り返して使います。
「擬態語」は日本語を修得する際に避けて通れない語群で、「ぺこぺこ」のように二回繰り返した形のものが多いです。例えば、「じろじろ」は対象を上から下までよく見ることを表わし、「きらきら」は何かが光り輝く様子であることを表現しています。
発音したときの語感を楽しみながら、覚えて使ってみると日本語での表現がぐっと豊かになりますよ。
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"Mō pekopeko da yo" or "I'm so pekopeko."
This phrase is uttered in a specific situation, can you guess what?
Pekopeko is a type of mimetic... Show more
November 19, 2009
Advanced Japanese Lesson: 語呂合わせ(goroawase)
治療の予約をしようと歯科医院の診察券を見たら、電話番号が「37-6480」と書かれていました。これは、日本人にとってはとても覚えやすい数字です。なぜかというと、「みんな、むしばゼロ」と読めるからです。
日本語では数字を「いち、に、さん…」と読むだけでなく、「ひ(ひとつ)、ふ(ふたつ)、み(みっつ)…」とも読みます。これらの読み方を組み合わせて別の意味を生み出し、数字を当てはめて連想しながら覚えると、より一層、強く記憶にとどめることができます。
特に、歴史の年号を覚えるときにはこのような覚え方が威力を発揮します。日本史の年号で最も有名なのは、鎌倉幕府成立の年とされる「1192年」。これは、「いいくに」と読めるため「いいくに 作ろう 鎌倉幕府」と関連付けた文章と共に暗記しやすいからです。
2の平方根√2は1.41421356…ですが、数字の並んでいる通り、左から順番に暗記しようと思っても容易ではありません。しかし、「ひとよ ひとよに ひとみごろ(一夜 一夜に 人 見頃)」と読み換えれば9個の数字を簡単に覚えることができます。
このような読み方を「語呂合わせ」と言います。「語呂」とは、「ことばや文章の続き具合、調子」のことを指し、ことばの続き方を調子よく合わせることで、単なる羅列に過ぎない数字も、おもしろい意味を生み出して覚えたり、宣伝したりすることができるのです。
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In order to make an appointment at the dentist, I looked at the patient registration card and saw the phone number 37-6480. This number... Show more
November 5, 2009
Advanced Japanese Lesson: 几帳面 (kichōmen)
細かいところまで物事をきちんと行なう人や、決まりや約束を守って正確に処理する人を評して「几帳面だね」と言います。ところで、この「几帳面」ということばは、どのようにして生まれたのでしょうか。
まず、「几帳」とは、平安時代の貴族に愛用された移動式カーテンのことです。几帳は、おおまかに言って、Iの文字の上下の横棒を長くしたような形の木材と、布でできています。中心の棒の両側に、上の横棒から一枚ずつ布を掛けて、下の棒まで垂らしたものを想像してみてください。
平安時代、貴族の部屋は壁やふすま、板戸などが少なく、がらんとした大広間でした。そこを、この几帳によって間仕切りして使っていたそうです。貴族の調度品ですから、布にはきらびやかな模様が織られていたり、美しい刺繍が施されていたりしました。もちろん、布を垂らす木材も切り口や削り口をなめらかに丸く加工し、細かく刻み目を入れるなどの装飾がなされたとのこと。その刻み目は、細部にわたって丁寧に仕上げられていました。
几帳面の「面」は、削り落とされた後に出てきた「表面」を意味しています。このことから、江戸時代以降、「きちんとしていること」や「規則正しく正確である様子」などを指して「几帳面」と表わすようになったのです。
さて、あなたの性格はいかがですか。几帳面ですか?
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A comment commonly made to a person who is detail oriented, keeps promises and is very accurate is kichōmen or 'very thorough'. Let's see how this word came about.
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October 29, 2009
Advanced Japanese Lesson: なし
そこに在るのに「無い」という果物は何でしょう?
このなぞなぞの答えは「なし(梨、無し)」です。日本語には同音異義語と呼ばれる、同じ発音なのに異なる意味を持つことばがたくさんあります。このなぞなぞは、その特徴を利用したものですね。
数ある同音異義語の一つが「なし」。しかし、せっかく在るのに「無し」と表現するのは縁起が悪い、ということで「ありの実」と言い換えられて表現することがあります。
同じように、イカを干して裂いたものを「スルメ」と言って酒のつまみなどに食べますが、「スルメ」の「する」も商売をする人にとっては「金を擦る(金を失ってしまう)」という連想が働きます。また、物を盗むことも「掏(す)る」と表現することから(通りすがりの人の財布を盗み取る泥棒のことを「スリ」と呼びますね)、「スルメ」は「当たりめ」と言い換えて、縁起が良い呼び名で表現します。
同じ論理で、ゴマや芋などをすりつぶす「すり鉢」も「あたり鉢」に変身。
「僧侶」にいたっては、髪が一本もないのに「髪長(かみなが)」と呼んでいました。
それを知らずに「今日は髪長が来るよ」と聞かされ、ロングヘアーの来客を想像していたところ、スキンヘッドのお坊さんがやってきたら、さぞかしびっくりすることでしょう。
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What fruit is there, but not there?
The answer to this riddle is "nashi", which means "a pear" or "nothing."
In Japanese, there are homonyms which are words that sound the same, but... Show more
October 22, 2009
Advanced Japanese Lesson:祭
秋には、その年に収穫された野菜や果物を神に供えて感謝する「秋祭り」が行なわれます。
この「祭」という漢字をよく見てください。左上の「月」に似た部分は「肉」を表わしています。右上の「又」は「手」の意味。下の部分の「示」は「祭壇」を表わし、「祭」の文字は「肉のけがれを清めて神に供える」という意味を持っています。この「示」は「ネ」の形に変わって、様々な漢字に見られます。「社(やしろ)」、「福(ふく)」、「祈(いのる)」、「祝(いわう)」など、たくさんありますね。
「社」とは土地の神をまつった場所。
「福」は神から恵まれた豊かさを表わします。
「祈」は望むところに近づきたいと神に祈ることで、「祝」は神にめでたいことばを告げること。
つまり、「ネ」は神に関係することを意味しているのです(「神」という文字にも「ネ」が書かれますね)。この「ネ」を「しめすへん」と呼び、「示(しめす)」から由来しています。
悪い行ないをして神から罰を受けることは「禍(わざわい)」の文字で表わしますし、「禁(きんじる)」は神が宿る場所の周りに林をめぐらせて勝手に出入りできないように禁止した、という意味です。
日本には八百万(やおよろず)の神々がいらっしゃる、と言われるように、日本人は身の周りの物や現象に神の力を見出すのです。そのため、「示」「ネ」が書かれる漢字も多いのですね。
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In autumn, the "秋祭り" autumn festival is held in order to give thanks to the gods by offering fruits and vegetables that were harvested that... Show more
October 15, 2009
Advanced Japanese Lesson: 秋の月
本日は、秋の夜の和歌を紹介しましょう。
古今東西、「夜」をテーマにした文学作品は多く見られますが、日本の詩や和歌(短歌)、俳句では、星よりも圧倒的に月を扱った作品が数の上で勝っています。これは、日本人が折々に月を見上げ、その満ち欠けに自分の人生や感情を投影していたことを表わしているからでしょう。また、秋の日本の上空は空気が澄み、晴天の日も多いことから月が美しく見えます。よって、俳句で「月」と出てきたら秋の情景を詠んだものである、と考えて間違いないほどです。
月見れば 千々(ちぢ)に物こそ悲しけれ 我が身一つの 秋にはあらねど
大江千里(おおえのちさと)
意味は、「月を見ていると、心が様々に思い乱れて悲しいものだなぁ。私一人の身の上に秋がやってきたわけではないけれど」。日本人にとって、秋はどことなく物悲しい気分になる季節です。身の周りを秋の景物が取り巻くようになると、月を見上げながら、自分だけが特別にセンチメンタルな気持ちになってきます。
ちなみに、「ちぢ」の「ぢ」は「じ」と発音し、「一つ」「一個」の「つ」や「個」と同じ意味です。つまり、「ちぢ」とは「千個」のことで、大変に数が多い様子を表わしています。
月を見るという行為で、明るく幸福な気持ちになるというよりは、悲しく淋しい気持ちになるのが日本人。だから、この和歌に共感する人が多く、今日まで伝えられているのでしょう。
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Today, let me introduce you to a "waka", a 31 syllabic poem from an autumn evening.
Literary works with a night theme can be... Show more