Archive for the 'Advanced Japanese' Category
April 1, 2010
Advanced Japanese Lesson: 助六 (Sukeroku)
日本食の代表といえば「寿司」。小さく握った酢飯の上に魚介類などを乗せて食べるものですが、店や食材によっては高価な食べ物です。しかし、手ごろな値段で食べたい人や生の魚介類が苦手な人でも楽しめる寿司もあります。それは「助六(すけろく)」。稲荷寿司と太巻き寿司がセットになって、駅やコンビニエンスストアなどで売られています。
稲荷寿司は、油揚げ(豆腐を薄く切り、油で揚げたもの。長方形の一辺を切ると、袋状になっている)を醤油と砂糖で煮付け、その中にご飯を詰めた寿司です。太巻き寿司は、酢飯を海苔で巻いてある寿司のことです。中央にキュウリや玉子焼き、シイタケなどの具が入っています。
さて、この寿司のセットがなぜ「助六」という昔の男性の名前で呼ばれているのでしょうか。
その理由は、歌舞伎の『助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』という演目に由来しています。この話は、江戸時代の人々に人気の高い物語で、主人公の名前が助六さんだったのです。彼の恋人の名前は「揚巻(あげまき)」さん。つまり、彼女の名前には「揚(あげ)」=油揚げを使った稲荷寿司、「巻(まき)」=太巻き寿司というように、寿司を連想させることばが含まれているのです。そして、この寿司の組み合わせを直接的に「揚巻」と呼ぶのではなく、あえて恋人である「助六」と呼んでいるところに、江戸っ子のしゃれっ気が感じられますね。
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A representational food of Japan would be sushi. This is seafood placed on top of a small piece of molded vinegared rice, which can be an... Show more
March 25, 2010
Advanced Japanese Lesson: 看護と介護 (kango to kaigo)
「看護」と「介護」。発音が似ていますが、どのように違うのでしょうか。
まず、「看護」を考えてみましょう。「看」の文字は、「目」の上に「手」が添えられています。これは、手をかざしてじっと見ることを意味しているのです。つまり、ただ漠然と目に映るものを見ているのではなく、「見る対象を注意深く見る、見守る」という見方を表わしています。
次に「介」はどうでしょうか。「人」という字の下に「八」を書いています。この「八」は両脇に分かれることを意味し、両側に分かれて左右から中のものを守ったり取り持ったりする様子を表わしています。普段は使われませんが、「介」の文字には「はさむ」「たすける」という訓読み(日本独自の読み方)があるのです。だから、「介護」とは相手の脇からその人を支えたり助けたりすることなのですね。
最後に、両方の熟語に共通する「護」という漢字をみてみましょう。「言」(ごんべん)がついていますので、ことばに関係がある文字です。右側の「
蒦」には「手で外から包むように持つ」という意味があります。ゆえに、「護」の文字は「ことばをかけながら外側から取り巻いてかばうこと」を伝えているのです。
「看護」と「介護」、両者は意味が若干異なりますが、相手を大切に扱うという意味を有する点では共通していますね。
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The pronunciation of 看護 (kango) or "to nurse" and 介護 (kaigo) or "to care" are similar, but what are the differences in meaning?
First, let's take a look at 看護. The 看... Show more
March 18, 2010
Advanced Japanese Lesson: 雨かんむり(Ame kanmuri)
「雨」という漢字は、空から雨が降ってくる様子を線で表現したもので、絵のような文字ですね。では、この「雨」に「下」という文字を書くとどのように読むのでしょうか。
答えは「しずく」。この読み方は日本独自のもので、中国では水のしたたりをこの漢字で表わしません。また、雨以外の水、たとえばシャワーや涙の「しずく」には「滴」(「水滴」の「滴」)」という文字を用います。一般的には、雨のしずくだけを「雫」で表します。
さて、「雲」という漢字は、どのように雨に関連しているのでしょうか。「雨」の下に書かれる「云」は「立ちのぼる湯気が天井のような場所につかえて、もやもやとこもった様子」を線で表現しています。つまり、「雲」は「もやもやと立ちこめた水蒸気」のことなのです。ちなみに、「魂(たましい)」という漢字にも「云」が見られますが、魂もこれというはっきりした形があるわけでなく、「なんとなくあるらしい」と信じられているもやもやとしたものですね。
ところで、「電」はどうでしょう。昔は「雨」の下に「申」という文字を書いていましたが、次第に変化して現在の字形になりました。「申」は稲妻が空から地上に長く伸びて(「伸」の漢字にも「申」が見られますね)光っている様子を表わしています。
さらに、「霧」という漢字を読めますか。これは「きり」と読みます。「雨」の下の「務」には「手探りして求める」という意味があり、霧の中では立ちこめる水蒸気で周囲が見えなくなるので、手探りして進まなければなりません。そんな状態を漢字で表わすと「霧」になります。
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March 11, 2010
Advanced Japanese Lesson: 水に関する漢字
人間の身体は約60%が水分である、と言われています。私たちは水がないと生きていけず、水が豊かな場所に文明が発達したことは言うまでもありませんね。
漢字にも、「水」に関係した文字がたくさんありますよ。部首では「さんずい」と呼ばれる「
氵」が、漢字の左側に見られるものは、一般的な漢和辞典に載っているだけで642もの多数にのぼります。その中で、日常生活にしばしば用いられる漢字を紹介しましょう。
「洗」の文字に見られる「先」は、「足+人」で、人間の足先を表わしています。爪先は、指と指の間に隙間があいて離れていますね。その隙間に水を通してきれいにするのが「洗う」という行為です。
「洗濯」のように「洗」に組み合わされる「濯」にも「さんずい」が見られますよ。右側は「羽+隹」。「隹」の部分は、他の漢字でもよく見かけませんか? 「隹」は「とり」と読み、「鳥」を表わしています。字形が似ていますものね。木の上に鳥がたくさんいると「集」という文字になり、「あつまる」と読みます。また、「焦」は「こがす、こげる」と読み、鳥を火であぶってちりちりと焦がす様子が漢字になっています。鳥がすいすいと飛んで前に進むから「進」という文字には「隹」がいますね。
話題を戻すと、「濯」の文字には、鳥が羽根を高く上げた様子が含まれ、水で洗ったものをさっと持ち上げ、また水につけて洗って持ち上げて…と洗濯の動作を表わす漢字の組み合わせになっているのです。
さて、「沈」はどうでしょう。「
冘」は「牛+川」で、牛を川の中に沈める儀式を表わし、「枕(まくら)」も頭も下に沈める寝具なので、「木+
冘」と書きます。
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March 4, 2010
Advanced Japanese Lesson: 梅一輪(Ume ichirin)
梅一輪 一輪ほどの 暖かさ 服部嵐雪
厳しい寒さの続く日は、春の暖かさが待ち遠しいものです。そんな気持ちを表わした俳句を紹介しましょう。
作者の嵐雪は、松尾芭蕉の優れた弟子の一人に数えられ、江戸時代に活躍しました。彼の代表作が冒頭に示した一句です。意味は、「梅の花が一輪咲いた。冬の寒さがほんの少しやわらぐように、その一輪の梅にほのかな春の暖かさを感じるなぁ」。
日本三大随筆の一つである『枕草子』に、清少納言は次のように記しています。「木の花は、濃きも薄きも紅梅(木に咲く花としては、濃い色であっても薄い色であっても赤い梅が素晴らしい)」。現在、春をイメージさせる花としては桜が有名ですが、昔は春の花の代名詞といえば梅でした。奈良時代に成立した『万葉集』にも、桜より梅を詠んだ和歌が多く残されています。
丸みを帯びた花びらの形は可愛らしく、白、ピンク、赤といった色も気持ちを華やかにしてくれます。さらに、春風に運ばれて漂ってくる香りもまた、古来から人々に愛されてきたようです。冬枯れの風景の中、まだ新芽も顔を出さない寒々しい木々の合い間に、そっと花を開く梅。「春告草(はるつげぐさ)」という別名を持つ梅は、私たちが気づかない季節の移り変わりを教えてくれる花なのです。
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A single plum flower, a single flower's worth of warmth Ransetsu Hattori
During the continuing intense coldness, one can't wait for the warmth of spring. A haiku... Show more
February 25, 2010
Advanced Japanese Lesson:凩 (kogarashi)
凩…この漢字を見たことがありますか? 何と読むのでしょうか。
ヒントは、冬に関係のある漢字であること。さらに、字形をよく見てください。「風」という漢字に似ていますね。
答えは「こがらし」。一般的には「木枯し」と書き表します。
「こがらし」とは、冬の初めに木々の葉を払い落としながら吹く、冷たく強い北風のことです。「凩」の字は「国字(こくじ)」に分類され、中国で作られた漢字にならって、日本で新たに生み出された漢字です。要するに、和製漢字ですね。こがらしとは、「木を枯らすように吹く風(几)」なので「凩」という字形が考え出されたのです。
正月の遊びに使う「凧(たこ)」も国字です。「風(几)」の中にある「巾」は「布」という意味です(「布」という漢字の中にもしっかりと「巾」が含まれていますね)。「風を受けて舞い上がる布」=「凧」なのです。
では、「風が止まる」と書く「凪」という漢字はどう読むのでしょうか? これは「なぎ」と読みます。朝夕に風が止まる状態や時間帯を「朝凪(あさなぎ)」「夕凪(ゆうなぎ)」と呼びます。
このように、ことば遊びや連想ゲームにも似た感覚で作り出された国字。友人に、「この漢字、読める?」と教えてあげるのも楽しいですね。
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Have you ever seen the character 凩? How do you read it.
A hint: it's a kanji related to winter. Also, please look closely at the character's formation. It looks like the character 風 (kaze), "wind",... Show more
February 11, 2010
Advanced Japanese Lesson:むまそうな(mumasōna)
むまそうな 雪がふうはり ふはり哉(かな) 小林 一茶
本日、紹介するのは江戸時代後期に詠まれた冬の俳句です。
作者は、現在の長野県にあたる信濃の貧しい農家に生まれました。わずか三歳のときに母を亡くし、その後、継母がやってきますが母子関係はうまくいきませんでした。一茶は、子ども四人を授かるものの全員を幼くして亡くし、続いて妻にも先立たれてしまいます。二人目の妻とは結婚後半年で離婚。三番目の妻との間にやっと一人の女の子をもうけますが、その子の産声を聞くことなく、一茶はこの世を去りました。
このように家庭的な幸福に恵まれなかった一茶ですが、残された俳句には小さい生き物への愛情や四季の移り変わりが分かりやすく、素朴にうたいあげられています。
今回、選んだ俳句は冒頭に「むまそうな」とありますね。これは「うまそうな」つまり「おいしそうな」という意味。また、「ふうはり」と「ふはり」の「は」は「わ」と発音します。最後の「哉(かな)」は「~だなぁ」という意味。全体を解釈すると、「おいしそうな雪がふうわりふわりと降ってくるなぁ。」 子どもの頃、空から舞い落ちてくる雪を「おいしそう」と感じ、そっと口に含んだ思い出のある人には共感してもらえるのではないでしょうか。また、「ふうはり」と「ふはり」は擬態語で、雪がゆっくりと落ちてくる様子を表わしています。
大人になってもこんなふうにゆったりとした気分で雪を眺めたいものですね。
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むまそうな 雪がふうはり ふはり哉(かな) 小林 一茶
Succulent snow falls softly, softly. - Issa Kobayashi
Today I'm going to... Show more
January 28, 2010
Advanced Japanese Lesson:お足(o-ashi)
今、あなたの財布にはいくらお金が入っていますか?
給料やこづかいをもらって財布に入れておいたはずなのに、いつの間に遣ったのか気づくと残りのお金が少なくなっていた…こんな経験を誰もが味わったことがあるのではないでしょうか?
お金はまるで生き物のように、足でも生えていて勝手に出て行ってしまうようです。
今から約500年前、日本ではお金のことを「おあし(お足)」と呼ぶようになりました。室町時代、天皇や皇族に仕える女房(読み方は「にょうぼう」、召使いの意味。現在の「妻」を意味する「女房」とは異なる)が、直接そのものを指すことばを避け、上品に言い換えたり省略したりして使っていたことばの中に、この「おあし」があります。
他には、水のことを「おひや」と言ったり、豆腐のことを「おかべ」と表わしたりしていた、とのこと。それらの用語は食物や衣服、日常品に及び、「優雅なことば」「上流階級のことば」として一般の女性の間にも流行し、一部は男性にまで広がりを見せたそうです。
「足が出る」という慣用句は、「予算や収入に比べて支出の方が多くて赤字になる」という意味ですが、これはおあし(お金)が決められている枠を出てしまうから使われるようになった表現ですね。
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How much money is there in your wallet right now?
You get your salary or your pocket money and you were sure you put it in your wallet… but suddenly you notice: there's only a little of it left!... Show more
January 21, 2010
Advanced Japanese Lesson:恋愛(ren’ai)
昭和初期まで「恋」という漢字は「戀」と書いていました。
1949年に、画数が多く難しい漢字を「旧字体」、簡素化された文字を「新字体」と呼んで、これ以降は新字体を用いるようになったのです。
さて、「戀」には「心」が見られますので、感情や心の動きを表わす漢字であることはすぐに分かりますね。では、その上の「糸言糸」はどのような意味を持っているのでしょうか。
これは「ことばでけじめをつける」ということなのです。しかし、もつれた糸をほぐして一本一本を分けようとしても、そう簡単には分けられません。心が様々に乱れてすっきりしない状態は、まさしく「戀」しているときですね。
では、「恋愛」と組み合わせて書かれる「愛」という漢字はどうでしょうか。中央に「心」がありますので、やはり感情に関連していることは確かです。「心」の上にあるのは「旡」という文字が元になっていて、「人が心を詰まらせて後ろにのけぞった様子」を線で書き表したもの。「心」の下の「夂」は「足を引きずっている様子」を表わしています。つまり、「愛」という漢字は心が切なく詰まるような状態になり、足も思うように進まない様子を伝えているのです。
読み方の「アイ」は「哀」(あわれむ、かなしむという意味)と同じで、「恋」よりも悲しい印象を漂わせています。
「恋と愛はどのように違うのか?」と問われたとき、漢字を見ると「恋とは誰かを好きになって、心が様々に乱れる状態」であり、「愛とは悲しいほどに心が切なくなり、相手をいとおしく想う状態」であると説明することができるでしょう。
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Until the early years of the Showa period, the character 恋... Show more
January 14, 2010
Advanced Japanese Lesson:睦月(Mutsuki)
明治時代まで日本で使われていたカレンダーでは、一月は「睦月(むつき)」と呼ばれていました。言うまでもなく、一月は「正月」であり、年が改まった最初の一ヶ月です。
そんな一月をなぜ「睦月」と呼ぶようになったのでしょうか。
「睦」という漢字は「陸(りく)」という文字の元になった漢字で、漢字の右側は、は「土がもりもりと集まった様子」を表現するために考え出された記号です。ここから「睦」の文字には「多くの人が仲良く集まること」という意味が生じました。「仲直り」や「和解」という意味の「和睦(わぼく)」にも「睦」の漢字が含まれますね。
さて、「睦月(むつき)」の語源は、鎌倉・室町時代の文献に見られます。そこには、「正月には身分の上下や年齢など無関係に、親類や知人がお互いの家を行き来して、仲良く新年を祝う月である」と書かれているとか。呼び方も「むつびつき」から「むつき」へ次第に簡素化されたようです。
この他にも、「稲の実を初めて水に浸す月」という意味の「実月(むつき)」が変化したとする説もあります。さらに、「一年の元になる始まりの月」という意味の「もとつき」が「むつき」に転じたという説も見受けられます。
一月だけと言わず、周囲の人々とはいつも仲良く、穏やかに接したいものですね。
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In the calendar which was used in Japan until the Meiji era, 一月 (いちがつ, "first month" or "January") was called 睦月 (むつき). Needless to say, 一月 is the same as 正月, and means "the first... Show more